第24話 良心の覚醒体験^龍城の大悟

先生は、お酒が入っているせいか、

懐かしい面々と久しぶりにあったせいか、

先生はいつもより高揚されている感じだ。

 

先生は、私たちに近くに来いと言われ、

それぞれの顔を見渡されてから、

声のトーンを一つ下げてから話されました、

 

 

「ええか、お前らに大事なことを教えるぞ。

 良知こそが、大自然の摂理そのものなんや。

 大宇宙の法則と言い換えても良え。

 

 大自然を見渡したとき、動植物をはじめ、

 すべてがある一定の法則より動いている。

 

 たとえば、そこらにいる野良犬ひとつとっても、

 全ての行動が、種の繁栄、ほかの動植物と共存共栄に、

 100%適っている。

 1ミリたりともそこから外れた行動はない。 

 

 植物にしてもそうや、

 スイカの種を冬の暖かい日に植えても芽は出んやろ?

 適切な時期に芽を出し、そして実をつける。

 桜だって、咲く時期を間違えることはない。

 

 動植物は、自分の体内に、

 大自然の摂理を司る機能(メカニズム)をもってる。

 

 人間にだけ、

 その機能を備えてないと思うか?

 

 そんなことはあり得ないな。

 

 人間にも当然ある。

 

 ないと考えることに無理があるし、

 あると考える方が合理的やな」

 

 

 陽明先生は、水をゴクリと飲んだ。

 細身の先生の大きな喉仏が大きく上下する。

 袖で口元を拭い、こちらを見上げるように、

 

 「人間の中にある大自然の摂理、

  それこそが良知や。

 

  良知に従っていけば、

  全てうまくいく。

 

  私心に惑われず、良知にちゃんと、

  従うことさえ、できれば、、、、、、

 

  もうパーフェクトなんや。

 

  ほか何一つ、不足はないし、

  やるべきことはないんや。

 

  これに気がついたは、俺が38歳のときや、

  龍城っていう片田舎に左遷され、

  それこそノイローゼになりそうやった。

 

  いや、なってたかも知れん。

  悶々としながら毎晩寝床に入ったら、

  もう死んだ方が良いとなんども思ったわ。

 

  それがある晩、突如、わかったんや。

  閃いたというか、おりてきたというか、

 

  とにかくわかったんや。

  

  大宇宙の法則に気がついたんや、

  その大宇宙の法則自体が、自分の中にある。

 

  学ばんでも、ちゃんと元々から、

  あるんやって。

 

  突如わかったんや。

 

  それがわかった瞬間、

  それはもう、いてもたってもいられなくなり、

  握りこぶしをつくって、思わすその場で、

  ジャンプしとったわ。

 

  後にも先にもそれ以上の喜びはない。

 

  儒教、仏教の聖人たちは、みな、同じような、

  体験をしているやそうや。

  俺の弟子の中にも何人もおるな。

 

  後から知ったんやが、それを良心の覚醒体験とか、

  大悟するとかいうんやそうや」

 

 

 「このことに気がついたんが38歳や。

  これでもう完璧やと思ったんやけど。

 

  実は問屋はそう簡単にはおろしてくれんのや。

 

  俺は悟ったぞって、思うんやけど、

  つい忘れてしまうんや。

  

  だから、悟ってからもずいぶん迷ったし。

  悩んだし、苦しんだ。

 

  でもあれから10年ちょっとが経って、

  確信した。

 

  良知に従う、忠実に生きる。

  その心の声のまま、それを素直に行動に移す

 

  DO the 良知って感じや。

 

  東洋っぽく言えば、致良知やな」

 

 

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